こんにちは。今回は前回のコラムで取り上げた「三位一体労働市場改革の論点案」の続きです。

前回でも触れましたとおり「三位一体労働市場改革」の狙いは「労働移動による我が国の経済成長」です。
4つの論点案の骨子は
①リ・スキリングによる能力向上支援
②個々の企業の実態に応じた職務給の導入
③成長分野への労働移動の円滑化
④多様性の尊重と格差の是正
で、①は前回書きましたので、まずは②「職務給の導入」から見ていきましょう。

◆個々の企業の実態に応じた職務給の導入
「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」は、
・指針では、職務給(ジョブ型雇用)の日本企業の人材確保の上での目的、ジョブの整理・括り方、これらに基づく人材の配置・育成・評価方法、ポスティング制度、賃金制度、休暇制度などについて、先進導入事例を整理し、個々の企業が制度の導入を行うために参考となるよう、多様なモデルを示す。
としています。
国としては、日本の賃金が先進諸外国と比べて安くなってしまった現状の課題解決のため、職務給(ジョブ型雇用)を進めていく考えです。
確かにDX人材の中途採用では従来型の職能給では対応ができず、すでに大手IT企業では職務給にシフトしています。
すべての企業・職種でいきなり職能給から職務給に切り替えていくことは容易ではありませんが、今後は時間をかけて職務給や役割給(職務給と職能給のハイブリッド型)を導入していく企業が増えることでしょう。

また「給与制度・雇用制度の透明性」については
・企業が有価証券報告書や統合報告書等に記載を行う際に参考となる「人的資本可視化指針」(昨年 8 月策定)についても、6月までにまとめる指針の内容を踏まえ、今年末までに改訂する。
としていますように、上場企業を中心に開示が進んでいくことになります。

◆成長分野への労働移動の円滑化
次の論点は「成長分野への労働移動の円滑化」です。
これは
・失業給付制度の見直し
・退職所得課税制度の見直し
・自己都合退職に対する障壁の除去
・求人・求職・キャリアアップに関する官民情報の共有化
の4項目が掲げられています。
このうち、社労士・人事担当者として特に注目したいのは「自己都合退職に対する障壁の除去」だと思います。
具体的な論点は
〇民間企業の例でも、一部の企業の自己都合退職の場合の退職金の減額、勤続年数・年齢が一定基準以下であれば退職金を不支給、といった労働慣行の見直しが必要になりうる。
〇その背景の一つに、厚生労働省が定める「モデル就業規則」において、退職金の勤続年数による制限、自己都合退職者に対する会社都合退職者と異なる取り扱いが例示されていることが影響しているとの指摘があることから、このモデル就業規則を改正することとしてはどうか。
です。
自己都合退職の場合の退職金の仕組みを見直すこと、厚生労働省の「モデル就業規則」の改定も視野に入れており、インパクトはかなりあります。

◆多様性の尊重と格差の是正
最後に見ていくのは「多様性の尊重と格差の是正」です。
主な内容としては
・最低賃金
・労務費の適切な転嫁を通じた取引適正化
・同一労働・同一賃金制の施行の徹底
・キャリア教育の充実
です。
社労士としては「同一労働・同一賃金制の施行の徹底」、キャリアコンサルタントとしては「キャリア教育の充実」に注目だと思います。
「同一労働・同一賃金制の施行の徹底」は、
各都道府県労働局が管轄(指導・助言の決裁権限)していますが、昨年12月から労働基準監督署でも調査の試行を行い問題企業について、労働局に報告させることとしており、今後より一層徹底されることは間違いありません
「キャリア教育の充実」は、小・中・高・大学におけるキャリア教育の充実です。そのために実施方法・事例を周知することやカリキュラムの見直しが掲げられています。

◆まとめ
国は、成長産業に労働移動を進め、それを阻害する障壁を撤廃し、ジョブ型雇用を進めていくことを明確に打ち出しています。
個人は、リ・スキリングによって高付加価値の仕事をすることで高い報酬を受けていくことができます。
一方、企業は高い報酬を出せるよう生産性を高めなければ競争に負けてしまいます。

社労士・キャリアコンサルタントの私としてはその支援ができるよう常に学び提案していきたいと思います。